風に揺れて「チリンチリン」と心地よい音を響かせる風鈴は、日本の夏を象徴するものの一つです。
その音を聞くだけで涼しさを感じたことがある人も多いでしょう。
一年中飾ってもいいように思えますが、なぜ夏だけ飾るのでしょうか?
今回は、風鈴を夏に飾る意味や、その音を聞いて涼しさを感じる理由について説明します。
風鈴とは
風鈴は家の軒先などに吊り下げ、風に揺れると音を楽しむ道具です。
ガラス、陶器、金属などの素材で作られ、一般的に以下の三つの部分で構成されています。
外見(そとみ):鐘とも呼ばれ、お椀型や風船型、クラゲや魚型などさまざまな形があります。
舌(ぜつ):振り管とも呼ばれ、外見から吊り下がり、この部分が当たることで音が鳴ります。
短冊(たんざく):舌の先に吊り下がり、風を受けて揺れることで舌が外見に当たります。
風鈴の歴史
風鈴の起源は約2000年前の中国で、吉凶を占うための道具「占風鐸(せんぷうたく)」が始まりとされています。
占風鐸は竹林に吊るし、音の鳴り方や風の方向で吉凶を占ったそうです。
奈良時代に遣唐使が仏教とともに持ち帰り、日本では「風鐸(ふうたく)」と呼ばれるようになりました。
日本では古くから強い風が疫病や邪気を運ぶと考えられ、魔除けとして風鐸を飾る習慣が生まれました。
平安時代になると貴族の間でも魔除けとして軒下に飾られ、この頃から「風鈴」と呼ばれるようになったと言われています。
江戸時代中期には西洋からガラス文化が伝わり、ガラス製の風鈴が作られるようになりました。
ガラスの風鈴は高価で、庶民に広まったのは江戸時代末期から明治時代ごろとされ、この頃から夏に風鈴を飾る習慣が始まりました。
風鈴を夏に飾る理由
風鈴の音が持つ涼しげな響きは、暑さを和らげるために夏に飾られるようになったと言われています。
また、風鈴の音が聞こえる範囲に住む人々は災いが起こらないと信じられたこともあり、魔除けとしても飾られてきました。
風鈴の音を聞くと涼しさを感じるのは、音の周波数が人の心理に影響を与え、涼感を生み出すためとされています。
日本の風鈴文化は、夏の暑さを和らげるための工夫として現代でも受け継がれています。
風鈴の種類
風鈴とひとくちにいっても、さまざまな種類が存在します。
ここでは有名な7つの風鈴について、それぞれ紹介していきます。
江戸風鈴
江戸時代から続く伝統的なガラス製風鈴、江戸風鈴はその美しさと音色で多くの人々に愛されています。
篠原風鈴本舗や篠原まるよし風鈴などの職人が手作りで製作しており、同じものは一つとして存在しません。
その透明なガラスと鮮やかな色彩が特徴で、風に揺れると涼やかな音色が響きます。
ガラスの透明感が見た目にも涼しさを感じさせ、日本の夏に欠かせない風物詩として人気があります。
南部風鈴
岩手県の南部鉄器を用いた南部風鈴は、高く澄んだ音色が特徴です。
南部鉄器の技術が生かされ、頑丈で美しい風鈴に仕上がっています。
その音色は遠くまで響き渡り、夏の暑さを忘れさせてくれるような涼しさを感じさせます。
南部風鈴の音色は日本の伝統的な美意識を反映しており、特に暑い季節には心地よい癒しを提供します。
小田原鋳物風鈴
神奈川県小田原市で作られる小田原鋳物風鈴は、鋳物技術を駆使した伝統的な風鈴です。
松虫や鈴虫の鳴き声のような音色が楽しめるため、夏の夜を一層風情あるものにしてくれます。
その音色は自然と調和し、耳に心地よい響きを届けます。
小田原鋳物風鈴は、手間暇かけて作られた精巧なデザインと音の美しさで、多くの人々に親しまれています。
明珍火箸風鈴
明珍家が作る明珍火箸風鈴は、平安時代から続く甲冑師の技術が生かされています。
火箸を利用したこの風鈴は、4本の火箸が触れ合うことで澄んだ音を奏でます。
その音色は他の風鈴とは一線を画し、独特の趣があります。
長い歴史と伝統を持つ明珍火箸風鈴は、日本の文化と工芸の深さを感じさせてくれる貴重な存在です。
有田焼風鈴
佐賀県有田町で作られる有田焼風鈴は、美しい磁器で作られています。
磁器の硬く澄んだ音色は、他の素材では出せない特有の響きを持っています。
有田焼の繊細なデザインと美しい装飾が施され、見た目にも涼しげです。
伝統的な有田焼の技術が結集されたこの風鈴は、夏の風物詩としてだけでなく、インテリアとしても人気があります。
別府竹風鈴
大分県別府市で作られる別府竹風鈴は、竹細工の技術を駆使した風鈴です。
南部風鈴を手作りの竹かごで包み込むことで、優しく響く音色を楽しむことができます。
竹の自然な風合いと鉄器の音色が調和し、涼しげで落ち着いた雰囲気を演出します。
別府竹風鈴は、自然素材の温かみと職人技の結晶として、多くの人々に愛されています。
琉球ガラス風鈴
沖縄で作られる琉球ガラス風鈴は、鮮やかな色彩と独特の音色が特徴です。
南国の風情を感じさせるこの風鈴は、琉球ガラスの美しさと透明感が際立ちます。
沖縄の伝統的な技法で作られた琉球ガラス風鈴は、見た目にも涼しさを演出し、夏の暑さを和らげるアイテムとして人気があります。
その鮮やかなデザインと音色は、リゾート感を漂わせ、癒しのひとときを提供してくれます。
なぜ涼しく感じるのか?日本人だけが感じるもの?
風鈴の音を聞いて涼しく感じるのはなぜでしょうか?実際には気温が下がっていないため、脳が音によって「涼しい」と錯覚していると言われています。
具体的には、「風鈴の音がする⇒風が吹いている⇒涼しい」という条件反射が起こり、体の表面温度が下がる効果があるとされています。
日本人の脳は「風鈴の音=涼しい」と認識しているため、この条件反射が自然に働きます。
これは、夏に風鈴の音を頻繁に聞く日本人特有の現象です。
一方、風鈴に馴染みのない外国人は、風鈴の音を涼しさと結びつけないため、涼しさを感じることは少ないようです。
むしろ、リラックス効果で血行が良くなり、暑く感じる場合もあります。
まとめ
もともとは魔除けのために飾られていた風鈴ですが、現在では涼しさを感じるために用いられています。
現代の住宅事情では軒下がない場合や高層階で窓が開けられない場合もあるため、室内に飾るタイプの風鈴も販売されています。
置き型の風鈴は、涼しさや癒し効果だけでなく、インテリアとしても楽しむことができます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。